【時間学国際セミナー】

去る平成27年12月18日(金)、山口大学吉田キャンパス総合研究棟・フォーラムスペースにて、時間学国際セミナー「眠りの時間学」が開催されました。同セミナーは翌日の時間学国際シンポジウム「眠りの時間学」と連動したもので、5名の研究者による研究報告が行われました。「日本社会の眠り」を共通テーマとしつつ、各報告者の専攻にそった報告を行うというスタイルの研究集会で、およそ30名の研究者が学内外から参集しました。

甲斐昌一時間学研究所所長による開会挨拶の後、森下徹教授(山口大学)による司会進行のもと、次の順序で会は進められました。

まず、平安朝前後から近世にいたる睡眠習慣の推移を論じた報告「早寝、早起き、朝ごはん」(ブリギッテ・シテーガ准教授・ケンブリッジ大学)。戦国時代から江戸期にかけての神道家の日記を手がかりとして、前近代日本社会での睡眠・夢にまつわる表象ないし実践の特徴群を把捉した報告「『兼見卿記』と『梵舜日記』における夢と時間」(エリザベス・ケニー准教授・関西外国語大学)。「幸若舞」のテクスト分析から室町時代前後の人びとの時間経験の階層的・地域的多様性を考察した「幸若舞に基づく室町時代における百姓の「眠り」の習慣と思考の分析」(ベン・グラフストロム助教・秋田大学)。テクスト群の詳細な解読から、漱石文学における「眠り」のモティーフの諸類型とその文学論(史)的布置について、世紀転換期の学知的・思想史的趨勢と関連づけつつ剔抉した「夏目漱石文学における眠り:夢・感覚・無意識」(エムデ・フランツ教授・山口大学)。そして最後に、平安期の文学作品に見られる「夢告」という場面から古代人たちにとって外的世界との心的接触の契機として〈夢〉が経験され現象していたことを精緻に跡づけた報告「平安文学における夢告と遊離魂」(森野正弘准教授・山口大学)が行われました。各報告後の質疑応答では活発かつ専門的な議論が交わされ、学術的にきわめて実のあるセミナーとなりました。

 

【時間学国際シンポジウム2015「世界が認めたニッポンの居眠り」】

平成27年12月19日(土)、山口大学人文学部大講義室にて、山口大学時間学研究所との共催で時間学国際シンポジウム「眠りの時間学」を開催しました。今回のシンポジウムは森下徹教授(山口大学)、森野正弘准教授(山口大学)のコーディネートとご尽力により、ケンブリッジ大学のブリギッテ・シテーガ准教授(社会人類学、日本研究)をお招きし、「電車内での居眠り」という日常実践から生成される時間的・空間的公共秩序の容貌についてご講演いただきました。

 

 

 

会は、岡正朗山口大学長による開会の挨拶、森下教授による講師の略歴紹介、シテーガ先生のご講演という次第で進められました。

公共空間とりわけ電車での仮眠という現代日本社会固有の時間習慣がはらむ社会的意義と機能が、儀礼論・ジェンダー論・フレーム論など文化人類学・社会学的視点から重層的かつあざやかに導出されていくご講演に、参加された約100名の聴衆の方々は熱心に聞き入っていました。

講演の後には、エムデ・フランツ教授、坪郷英彦教授、エリザベス・ケニー准教授、ベン・グラフストロム助教も登壇しパネル・ディスカッションが行われました。ディスカッションでは、他の相互不干渉的な公共内実践(電車でのケータイ依存)や他の公共的空間・時間(学校の授業など)での居眠りとの比較可能性、あるいは覚醒・不眠を志向する欧米的でハイ・ブラウ的な価値体系との対照性など、パネリストの専門や経験に即しつつ、睡眠と公共性という問題にまつわる示唆に富む議論が繰り広げられました。

会場からの質疑応答の終了後、睡眠(仮眠)という視点が時間論とりわけ人文社会科学領域での時間研究にとって

学術的豊饒性についてシテーガ先生から改めて総括いただき、会は盛況のうちに閉じました。

 

 

Comments are closed.

Post Navigation